大判例

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東京高等裁判所 昭和33年(う)1430号 判決

被告人 鈴木忠

〔抄 録〕

本件控訴の趣意は長岡区検察庁検察官事務取扱検察官金田善尚作成の控訴趣意書のとおりであり、これに対する被告人の答弁は弁護人佐川浩作成の答弁書のとおりであるからいずれもこれを引用し、当裁判所は次のように判断する。

原判決が被告人を免訴した理由は、被告人に対する公訴事実は挙示の証拠によつて認められ、そして被告人の所為は道路交通取締法施行令第四十一条による旧新潟県道路交通取締規則(昭和三十一年新潟県公安委員会規則第一号)第八条の制限に違反したものであるが、右規則は昭和三十三年四月十五日新潟県公安委員会規則第二号(即日施行)により改正され、その改正規則第九条において第二種原動機付自転車はその制限から除外され本件の如き場合は取締の対象にならないこととなつたから刑の廃止があつたものとして免訴すべきであるというのである。よつて按ずるに本件当時乗車人員の制限をしていた新潟県道路交通取締規則(昭和三十一年新潟県公安委員会規則第一号)第八条では原動機付自転車及び二輪の自転車に二人以上乗車してはならないこととなつていたのであるが、右規則は昭和三十三年四月十五日新潟県公安委員会規則第二号(即日施行)をもつて改正され、乗車人員の制限を規定した同規則第九条では第一種原動機付自転車又は一人乗り二輪自転車の運転者は他人を乗車させてはならないこととなり、本件のような第二種原動機付自転車は右乗車人員の制限から除外され取締の対象とならないこととなつたことは原判決の説示するとおりである。しかし公安委員会規則をもつて特定種類の諸車につき道路における危険防止その他の交通の安全を図るため必要と認める乗車人員又は積載重量等の制限を定めることができる旨規定した道路交通取締法施行令第四十一条及びこれに違反する所為を処罰する旨規定した同令第七十二条第三号は本件犯行の当時は勿論現在でも存在している。そして右施行令第四十一条は公安委員会に対し、道路における危険防止その他の交通の安全を図るため、特定種類の諸車につき乗車人員又は積載重量若しくは積載容量の制限を定めることを委任しているのであるが、それは公安委員会をしてその所管内における道路並びに諸車の交通状況などを勘案し、その状況の推移に応じ時宜に適する措置をとらせるためであつて、右規則が交通状況の変化に伴い屡々改正されることは前記施行令第四十一条の予期しているところであり、従つて同条はいわゆる白地刑法であると共に一時的事情の消滅又は変更により廃止又は変更されることが予定されている内容を含む限時法的性格を有する規定と解するのが相当であるから、これに基いて制定された公安委員会規則により一部の禁止が解除されても既にその前に成立した違反行為に対する刑が廃止されたものということはできない。若し原判決の如く解せんか時を同じくする同種の違反行為が裁判時の前後により或は有罪となり或は免訴せられるという不公平な結果を招来するばかりでなく、公安委員会における規則改正の気運が近づくにつれ事実上違反行為取締の徹底を期し難く道路における危険防止その他の交通の安全を図るという前記施行令の目的は著しく阻害されることとなり到底容認し難い。然るにこれと反対の見解の下に被告人に免訴を言い渡した原判決は法令の解釈及び適用を誤つたもので、その誤が判決に影響を及ぼすこと明らかであるから論旨は理由がある。

(大塚 本田 渡辺)

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